1.はじめに
〈対話法〉は浅野の造語です。また「対話法の原則」と「練習方法」は、従来から心理カウンセリングなどにおける基本的技法の一つとして使われていたものに、日常生活で役立つよう浅野がくふうを加えたものです。
2.〈対話法〉について
対話法の原則―自分の考えや気持ちを言う(反応型応答)前に、相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめる(確認型応答)。(「確認型応答」は、日常の対話では習慣的に省略されています)
2.1 なぜ〈対話法〉が必要なのか
人間は、自分の考えや気持ちをできるだけ正確に伝えたい欲求を持っています。対話においては、この欲求を互いに認め合うことがたいせつです。お互いを尊重 し合うことによって信頼関係が深まります。また、私たちが何かを話すとき、必ずしも自分が言いたいことを正確に言語化しているとは限りません。逆に、人の 話を聞く場合、相手の言葉を正しく理解しているとは限りません。このくい違いが誤解の原因の一つです。これらを改善するために役立つのが〈対話法〉です。
2.2 どんな時に使うのか
心のより深いところで話し合い(対話)をしたい場合、また、誤解が生じたり、意見や感情の対立が起こりそうになった場合は、できるだけ早目に「対話法の原則」を用いることがたいせつです。
3.練習方法
3.1 練習の必要性
〈対話法〉を身につけるには練習が必要です。また、日常での「確認型応答」は適宜行ないますが、慣れないうちは「反応型応答」と「確認型応答」の気持ちの切り換えが難しいので、練習では時間によって立場を明確に区別します。それによって、〈対話法〉の原則を早く習得できます。さらに、〈対話法〉を知っている人同士なら、必要に応じて、この「練習方法」をそのまま日常の対話に使うことができます。
3.2 準備
3人が1組になり、2人が「発言者」と「確認者」、1人が「観察者」になります。ここで、「話し手」と「聞き手」という一般的な名称で呼ばないのは、ただ聞いているだけでなくて「確認型応答」をすることを強調したいからです。
3.3 進め方
(1)「発言者」が自分の言いたいことを話します。
(2)「確認者」は「発言者」が言いたいことの「要点」を言い返して「確認型応答」をします。
(3)「発言者」は、「確認型応答の内容」が自分の言いたいことと合っていれば話を進め、違っていれば補足、訂正をします。
そして(2)と(3)を繰り返します。
○このように、発言と確認型応答を繰り返し、時間になったら「発言者」と「確認者」だけが立場を交替します。「観察者」は同じ人が続けます。
○交替の際に、話題を替えても替えなくても各自の自由です。
○交替の時間は3〜5分ごと、回数は2〜5回で、リーダー(全体のまとめ役)が決めて指示します。
○時計係はリーダーか観察者が行ないます。30秒くらい前後しても問題ありません。
つまり、
1回の表(3〜5分):発言者Aさん―確認者Bさん
裏(3〜5分):発言者Bさん―確認者Aさん
2回の表(3〜5分):発言者Aさん―確認者Bさん
裏(3〜5分):発言者Bさん―確認者Aさん
・・・・・・
・・・・・・4.練習の時に心がけること
4.1 確認者
(1)だまって聞いているだけでなく、必ず「確認型応答」をしてください。それが練習です。
(2)「確認者」の立場にいる間は、「同意」「否定」「評価」「批判」「意見」「なぜ?という質問」など、つまり、自分が言いたいことは言わないように努めてください。
(3)出来事や事実だけでなく、「発言者」の気持ちや感情にも焦点を当ててください。
(4)「発言者」の過去の気持ちだけでなく、今、その場で感じたり思っていることに焦点を当てた「確認型応答」を心がけてください。
4.2 発言者
(1)手ぎわ良く話そうとしたり、うまく話そうと意識する必要はありません。
(2)「確認者」が「確認型応答」をしやすいように、適当な間をあけて話してください。
(3)一度にいくつもの事柄を話さないようにしてください。
(4)出来事だけでなく、それにまつわる自分の気持ちや考えを言うことがたいせつです。
(5)話しているうちに気持ちが変わった時は、遠慮なくそれを相手に伝えてください。
(6)相手からの「確認型応答」が自分の言いたいことと同じかどうか、自分の心に尋ねてください。違っていたら、遠慮なく補足や訂正をしてください。
(7)自分の心の内面や気持ちにじっくり向き合いながら話すことがたいせつです。沈黙でさえ大きな意味があります。
(8)なるべく、今、その場で感じたり思っている気持ちを探しながら話してください。
4.3 観察者
(1)技法が守られているかどうかを観察し、違っていたら手短に指摘してください。
(2)自分だったらどう「確認型応答」をするかを考えながら聞いてください。
5.感想を話し合う時に心がけること
(1)日常の対話の練習のつもりで、大事なところは〈対話法〉を使いながら話してください。
(2)質問や要望がある時は、遠慮なくリーダーに声を掛けてください。
(3)感想の内容は、「発言者」や「確認者」の欠点の指摘だけに集中しないで、良かったところも必ず言ってください。
著者・発行者 対話法研究所 浅野良雄 このページは、練習などの際にコピーして自由に使ってくださって結構です。
なお、その節は浅野までご連絡いただけると幸いです。
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